-PocketCOMPUTER-
最終更新日:2004/03/20

初代E500のキーボード不良がひどくなったため、新しくE500を購入しました。
使い倒した初代とは違い、外見も綺麗でキー入力も問題なし。が、1つだけ気になる点が。
それは、メモリ容量が32KBしかないということです。今のコンピュータからすれば、32KBなんて話にもならないサイズですが、ポケコンでは十分なサイズです。 しかし32KBしか使えないとなると、動かすプログラムを変える度に外部からファイルを読み込まなくてはなりません。 それにポケコンを持ち歩く場合、複数のファイルを持ち運ぶにはデータレコーダなども持ち歩く必要があります。

幸いE500ではメモリ増設などの改造方法が確立されており、様々な方法が公開されています。 そこで今回は、4M-SRAMを2つ使って計1MBのメモリに増設する改造などにチャレンジすることにしました。 今回行った改造に関する詳細は、mizunoさんのホームページに掲載されています。

また、改造を行った場合メーカーのサポートは一切受けられなくなりますので、個人の責任で行って下さい。

初代E500改の内部 これまで使用してきたE500は、256KB化とクロックアップ、ACアダプタのコネクタ内蔵の改造を行っていました。 この時はまだメモリが高かったこともあり、1M-SRAM2個を使用していました。 また、フラットパッケージ(小型のもの)でないものを買ってしまったため、ジャンパ線が飛び交うおぞましい状態になっています。

現在ではメモリの価格はかなり下がっていますが、ポケコンで使用できるSRAMは製造中止となっているものが多く、今後入手しづらくなる可能性があります。
地方ではメモリなんてなかなか売っていませんので、通販などを利用して購入することになるかと思います。
今回は秋葉原へ行く予定がありましたので、そのついでに改造に必要なパーツを購入することにしました。

SRAMを加工する
これが今回購入したSRAMです。日立製の「HM628512BLFP-5」が2つ。1つで512KBの容量があります。 これらを本体内に収めるために2つのSRAMを重ねるのですが、そのままでは厚くてうまくフタを閉められなくなってしまいます。 そんなわけで、SRAMの表面を削って薄くしてやる必要があります。
日立製の4M-SRAM
SRAMを削ったものとの比較 実際にはこんな感じ。ね?薄くなってるでしょ。
改造記事の説明には「裏表を0.2mmぐらい削る」とありますが、私の場合、下のSRAMは上面だけ、上に乗せるSRAMは下面だけを削りました。 SRAMの厚さは2mmちょっとありましたが、これを2mmくらいまで削りました。
SRAMを削るには、紙やすりを使うのが便利です。耐水性ペーパーであれば、削りカスを水で洗い流せばまた使えるのでお得です。
今回は180番(目の粗さ)を使いました。これを平らなテーブルの上にしき、SRAMを指で押さえて削っていきます。
SRAMに限らずICを扱う場合は、あらかじめ水道管に触れるなどして、体内の静電気を逃がしておきます。 下手するとこの静電気が原因で、ICを壊してしまうことになりますので。
で、この方法では、SRAMの下面を削るには邪魔にならないよう足を横に伸ばしてやる必要があるんですが、あまり足を伸ばしたり曲げたりしていると折れてしまう危険があるので、足をほとんど加工しない下のSRAMは、足を伸ばさずに削れる上面だけを削りました。 逆にほとんどの足を加工する必要のある上のSRAMは下面を加工。やはりICの表記を消してしまうのは抵抗がありますから。
SRAMを削る作業の様子

基板のSRAMを外す
まっさらなE500の内部 加工が終われば、次はいよいよE500をバラします。裏面のネジを外し、フタの下側からツメを外しつつ開いていきます。 基板からフタの裏側にスピーカーのコードがつながっていますので、間違って切ってしまわないうちにハンダごてで外してしまいます。
さて、内部には6つの大きなICが並んでいますが、32KBのSRAMは右下のものです。
まずはハンダ吸い取り線を使って、足に付いているハンダをある程度除去していきます。
次にハンダごてでハンダを温めながら、ピンセットの針などで足を持ち上げるようにします。 すると、簡単に足を浮かせることができます。これを繰り返し、すべての足を基板から外します。
32KBのSRAMです
SRAMを外したところ うまく外れたら、パターンに残っている余分なハンダを吸い取り線で除去します。
基板から外したSRAMは、案外使い道がなかったりします。私の場合はZ-1のメモリ増設に使うことにしましたが。
保管する場合は、静電気から守るためにアルミホイルなどでくるんでおきます。

1段目のSRAMの装着
で、次はいよいよSRAMの装着です。回路図を睨みながらSRAMを基板にハンダ付けします。
4MのSRAMは横幅が大きめなので、足をちょっと内側に寄せておく必要があります。 パターンの上にSRAMを置いたら、足をこてで温めハンダ付けしていきます。

SRAMが付いたら、今度はそこからCPUやHC158へのジャンパ線をつないでいきます。 ピッチの狭いCPUの足へのハンダ付けは難しいので、じっくり取り組みましょう。ハンダがブリッジしてしまったら、こまめに吸い取り線で除去していきます。 あまり長い時間ハンダごてを当てていても、熱でCPUが壊れてしまうので、そのへんも注意しなくてはいけません。
GNDやVccはSRAMの近くにありますので、そっちにつなぎます。
HC158は写真の場所(中央下の横長のIC)以外でも、邪魔にならない場所であればどこでもOKです。適当な場所に配置し、ジャンパ線をつないでいきます。
1段目装着後の状態
配線が済んだら、間違いがないか回路図と見比べ、テスタで導通しているかチェックします。ハンダ付けしていても導通していない場合もあるので、しっかりチェックしましょう。
今回の改造法では、1段目の改造のみで512KB化の改造になります。というわけで、ここで一旦フタを閉めて動作チェックしてみました。
512KBになっているはずなんですが... 電池を入れ、電源投入。ここで動かなかったら、配線ミスの可能性があります。
でメモリを認識しているか「FRE0」や「DSKF"S1:」、「DSKF"S2:」でチェック。 が、結果はS1が126904Byte、S2が131047Byte。どうも256KBにしかなってないようです。 フタを開けて調べてみたところ、CPUへの配線の一部が間違っていました。
で、改めてチェックし直すと、今度はS1が257976Byte、S2が262119Byte。見事512KB化に成功しました。
が、ここで一部のキー入力が無効になっていることに気づきました。配線をチェックしても間違いが見つかりません。 回路図を見てみると、2段目のSRAMからCPUのキーボード出力端子へ配線するようになっているので、これが原因と見てそのまま2段目の作業に移ることにしました。
今度こそ512KBに

2段目のSRAMの装着
2段目装着後の状態 そんなわけで、2段目の作業です。SRAMの足をまっすぐ下に伸びるよう加工し、1段目のSRAMの上に乗せます。 共通する足は1段目のものにハンダ付け。それ以外はジャンパ線でCPUなどにつないでいきます。 ここも細かい作業になります。配線後はチェックを忘れずに。
配線のチェックが終われば、今度は動作チェックです。まずは電源が入るかのチェック。うまく入ったら、DELTAのアーカイブに収録されているマシン語プログラム「DELTA」と「BANKTEST」を実行します。 これにはパソコンとの通信環境が必要です。ポケコン側にPLINK(C)をインストールしてパソコンとケーブルで接続し、各種通信ソフトでポケコンに転送します。
私の場合は、「aplk.x」というソフトを使い、X68000をポケコンのサーバとして使っています。
さて、デバイスドライバ「DELTA」をインストールした後、チェックプログラム「BANKTEST」を実行してみたんですが...バンクメモリが見つからない?
配線チェックをしてみましたが、どうも間違いが分かりません。
メモリチェックしてみましたが...
メモリは認識しているようです とりあえずE500がメモリを認識しているのか「DSKF"D:」で調べてみると、518144Byte。ちゃんと512KBになってます。 実際にファイルを書き込んでみましたが、これも問題ないようです。
う〜ん、どうもしっくりきませんが、1段目終了時に効かなかったキー入力も効くようになりましたし、一応1MB化の成功としておきましょう。
これでS1:256KB、S2:256KB、D:512KBの、合計1MBが使用可能になりました。
残念ながらS1、S2を256KB以上にすることはハードの制約上無理なようで、残る512KBはデバイスドライバを使ってラムディスクとして使用することになります。 S1がパソコンのメモリなら、S2、Dはハードディスクといったところでしょうか。ポケコンのレベルでは使いきれないほどの大容量ですが。

これだけの容量があれば、日本語環境やファイラなど、これまでとはまったく違った使い方をすることができます。 これこそがE500というマシンの真価なんでしょうね。改造でしかその環境を得られないというのは、ちょっと残念ですが。

クロックアップで高速化
さて、メモリ増設と並んで重要な改造がクロックアップです。倍のクロックに交換することによって、動作速度を倍に高速化することができます。 これによって、パソコンとの転送速度も倍に設定することができます。
が、倍速のままではカセットインターフェースも使えませんし、ノーマル機で動作することを前提としたゲームなどもプレイできませんので、スイッチによりクロックを切り換えることができるようにします。
というわけで、4.8MHzのセラミック発振子(セラロック)をスイッチで切り換えるように改造しました。作業自体は簡単なものです。 スイッチを取り付けるためにケースに穴を開けなくてはいけないのがちょっと手間かな。 私の場合は、11ピン端子の上のちょうどへこんでる部分に取り付けることにしました。ちょっと穴が大きくなりすぎたので、パテで固めてあります。 この位置だと、カセットインターフェースやカバーにぶつかって邪魔になったりするんですが。
クロック倍速化改造後の状態
画面がおかしい... 簡単な改造のハズだったんですが、いざ電源を入れてみるとなんだか画面が変です。おまけに高速モードでは動作しないし。
サブクロックの抵抗のせいか、はたまたセラロックが不良だったのか。色々調べてみましたが、セラロックを逆に付けてみると画面の乱れはなくなりました。 セラロックには極性があったんでしょうか?
しかし、高速モードで動作しないのは相変わらずです。これには悩まされましたが、電池を新しいものに交換することであっさり解決しました。 電池が消耗している時は、高速モードの取り扱いには注意が必要なようですね。

外部電源の製作
さて、クロックアップによって動作速度は倍になるわけですが、その分電池の消耗も大きくなってしまいます。
そこで必要になるのが外部電源です。PC-G850やZ-1などでは長時間の使用も想定してACアダプタのコネクタも装備されているわけですが、E500ではそんなものはありません。
というわけで、11ピン端子に装着して使用する「Gな外部電源」を製作することにしました。
これは、単1電池1本で6Vの電源の供給しようというものです。1本でも単4の数倍は電池が持つそうで、そうなれば経済的にも助かります。 ACアダプタも使えるわけですが、もし停電などで電源が落ちてもこの電池のおかげで出力電圧に影響はありません。 ポケコンの外部電源として以外の用途でも応用できそうですね。
あまり大きいとかさばりますので、なるべくコンパクトにまとめてみました。右の四角いのがACアダプタのコネクタです。
Gな外部電源の回路
カバーを取り付けたところ 剥き出しでは不安なので、カバーを用意しました。100円ショップで見つけてきた歯ブラシカバーだったりします。 できればE500本体の色と合わせた配色のものを選びたかったんですが、これしかありませんでした。 でも、邪魔にならないサイズですしカバーを開けることもできるので、意外に取り回しはいいですね。
中央のネジで、ACアダプタを差し込んでもコネクタが動かないように固定しています。

電池ボックスは単1用ともなるとかなり大きいので、ちょうど開いている穴からケーブルを伸ばして接続しようと考えていたんですが、ここで問題発生。 出力が1Vも出ていませんでした。調べてみると、どうもコイルが原因のようです。指定の性能のものが見つからなかったので適当なものを購入していたんですが、これがダメだったようで。 幸いコイルは電池からの電圧を変換するために使用しているようで、ACアダプタでの使用は大丈夫でした。 今後、ちょうどいいコイルを見つけるまでは、ACアダプタでのみ使用することになりそうです。

新生PC-E500の誕生
というわけで、ようやくE500の改造が終わりました。ひょっとしたらまだ問題が残っているかもしれませんが、とりあえずは完成です。
ここまで手を加えると、それなりの名前を付けてあげたくなります。2台目のE500を改造したものということで、「PC-E500mkIISR」にしようかなとも思ったんですが、SHARPのマシンにNEC系の名前を付けるのも何ですよねえ。 というわけで、SHARPの名機X68000のグレードアップバージョンとして登場したマシンの名前をもらい、「PC-E500XVI(エクシヴィ)」としました。 せっかくだからマーキングも直したいんですけどね。

PC-E500はすでに10年以上前のマシンだったりするんですが、後継機種の発売された今でも愛用している人は大勢います。 まあ大きな仕様変更があったわけではありませんし、こういった改造方法が多く公開されているのも大きな理由かもしれませんね。

PC-E500XVIの勇姿
E500用のアプリケーションは現在まで様々なものが発表されており、中には通信ソフトなどもあります。 もちろんインターネットへの接続ではなく、パソコン通信時代のものですが。当時はまだPDAも発売されたばかりで、これほど小型で通信が可能な端末は貴重でした。
とはいえ、ポケコンにそんなことができるというだけで驚きです。元々はアルファベットとカタカナ文字しか使えないのに、かな漢字を表示させるドライバまで公開されていたりします。 それもすべてがユーザーの作ったもの。いや、大したものです。

これらを組み込むことによって、ノーマルのE500とはまさに別物として生まれ変わります。 あとはこれをどう使っていくかですが、とりあえずゲーム作りかなあ。ネタは色々ありますし。 とにかく使ってあげないとね。

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