P
I - E T 1  -ELECTRONIC TOOL-
最終更新日:2005/06/07

PI-ET1が発売されたのは1991年初頭のこと。
当時は電子手帳ブームの真っ最中であり、各社から様々な電子手帳が発売されていました。 中でもシャープはそれまでのシリーズの集大成とも言える「DB-Z」を発売。 タッチスクリーン操作や手書きメモなど、のちのPDAのウリとなる機能が搭載され、さらにICカードによる機能拡張ではBASICカードを発売。 PC-98用として、そのBASICカードの開発支援のためのエミュレーターまでもが発売されていました。

そんな激動の時代に、当時パソコン市場のトップに君臨していたNECが満を辞して発売したのが「PI-ET1」です。
ET1は「ELECTRONIC TOOL」の略で、スタイリッシュなボディなど他の電子手帳とは一味違った魅力をかもし出していました。

中でもプログラミング機能の内臓はパワーユーザーのハートをガッチリゲット。 CPUはZ80で、BIOSなどの資料も公開されていました。 またBASIC言語でのプログラム開発を可能にする「ET-BASIC」も登場。 開発はHu-BASICやHuman68kなど、この分野では定評のあるHUDSON SOFTでした。
PC-98上で入力してコンパイルしたものをET本体で実行、という形にはなるようですが、プログラム開発のしきいが引き下げられたのはユーザーにとってはうれしい限り。 メーカーとしても、ET1のウリとしてプログラミング機能を重視していた、ということなのでしょう。

ほかの電子手帳と同じく、カードによるソフトウェアの供給も行われていましたが… 残念ながらそれほど充実していたわけではなさそうです。 ET1自体、マイナーな機種のまま終わってしまいましたので…

とりあえず、運用に関してはPC-98との連携キットである「パソコン・ハンド」が必須のようですが… 本体以上に入手は難しいかもしれませんね。 ファイルの転送だけであればフリーウェアでも作られていたようなので、あるいはケーブルを自作できればなんとかなるのかもしれませんが…

ET関係のソフトはネット上でもとんと見かけませんが、@niftyのPDAフォーラムライブラリにはまだ当時のプログラムなどが登録されているようです。

PI-ET1 PI-ET1を開いたところ。
ノートパソコンのような2ツ折りのスタイルで、液晶パネル右上にバーコードリーダーユニットがあるので、その部分は変則的な形となっています。

ヒンジ部は金属の軸を入れているだけの構造なので、ヘタリやすいようですね。

PI-ET1上面 本体上面。
表面はプラスチックの上に樹脂をコーティングしてある構造のようで、独特の質感と高級感があります。

が、それだけに角などははがれやすく、また保存状態によっては変質してしまうこともあるようです。

PI-ET1右側面 本体右側面。
左側がバーコードリーダー部。場所が場所だけに使いにくさはありますね。

右側のダイヤルは、液晶のコントラスト調整用。
その下のピンジャックはシリアルポートで、ここにPC接続用、またはET1同士の接続用ケーブルを挿します。

反対の本体左側には動作用電池、メモリ保護電池のスロットが配置されています。 電池の持ちは当時の電子手帳としては消費電力が2倍〜一ケタは違うので、とてもいいとは言えません。
PI-ET1背面 本体背面。
PI-ET1一番の弱点であると思われる部分です。 液晶とメイン基板を結ぶフラットケーブルが剥き出しになっています。 ビニール製の弱いケーブルなので、取り扱いには注意。

その下の四角い部分は、ICカード排出スイッチです。

カードスロット 本体底面。
ICカードスロットは本体右手前に配置されており、底面にはセットしているカードが判別できるよう透明な窓がついています。 標準で付属しているダミーカードは名札になっていたり。

カードの大きさはCFより一回り大きいくらい。 ちょうどPCMCIAを半分にしたサイズでした。
写真のものは外部メモリカードで、増設するわけではなく内臓メモリとは別ドライブという感覚で利用します。 厚さ3mm程度のカードながらメモリ保護のためボタン電池(BR2016)を使用しています。 当然交換可能。

液晶 液晶はもちろんモノクロで、バックライトもなし。 視野角はそこそこ広く、特にクセはありません。

メニューはアイコンで大きく表示され、カーソルキーで選択してそれぞれの機能を利用。
両サイドには現在の各種状態を表すインジゲーター(矢印)が用意されています。

キーボード キーボードは一応JIS配列。
キーピッチが狭いのは当然ですが、クリックが固くストロークも浅いので入力しやすいとはとても言えません。 カーソルキーも一見十字キーでゲームなどには相性が良さそうですが…これもキーボードと同様です。

手前のスライドスイッチは、ICカードのロックスイッチ。 ロック状態でないと電源が入らないようになっています。

外箱 今や貴重と思われる外箱。
箱に機能説明の文字は必要ないのではないかとは思いますが、なかなか渋いデザインです。
外箱裏面・その1 外箱の裏側には各機能の画面写真が。

スケジュール機能はカレンダーから呼び出すようになっており、一周間の予定をまとめて参照できます。

メモ機能は漢字、英数かなの小さなフォント、ドット絵、モンタージュの4種類を組み合わせて利用することが可能。 モンタージュ機能はパーツも比較的豊富に用意されており、パーツの配置位置の微調整もきくのでなかなか面白いですね。
電話帳、名刺機能でもモンタージュを使うことができます。 テキストによるメモのほかに簡易地図を使うことも可能。 これは直線を引く、数字、アルファベットを貼りつける程度のものなんですが、単純なだけに使いやすくはあるかも。
まぁ基本的に、どれも操作性がいいわけではないんですけど。

電卓は四則演算に加え、16進数、秒単位での計算も可能です。
一方の表計算は…残念ながら使い方がよく分かりません。 基本的なことはできるようなのですが、関数の設定方法、どんな関数が使えるのかが不明です。

外箱裏面・その2 オプションの模式図も掲載されています。

実際に発売されたオプションについては下記の仕様を参照してください。
中でも最重要オプションと思われるのが「パソコンハンド」。 ET1のデータをPC-98上で管理することができ、ET1の画面のキャプチャも可能らしいです。 ET1の特徴であるプログラムの管理、そして開発には欠かせないオプションでしょう。

PI-ET1の仕様
表示160x64ドットマトリックス液晶表示
10桁x4行(16x16ドット文字表示(漢字))
26桁x8行(6x8ドット文字表示(英数かな))
名刺管理機能カレンダー・スケジュール機能
2099年までのカレンダー表示
週間・日毎のスケジュール表示機能
メモ機能汎用メモの書き込み・読み出し
タイトル・内容による検索機能・目次機能
記憶容量32KB(ユーザーエリア28,415バイト)
最大64KBのRAMカードを使用可能←後に128KBのRAMカードが発売されています
内臓辞書約48,000語(人名・地名含む)
ユーザー辞書あり
使用文字種総文字数4,550種(うち8文字はユーザー文字)
その他パスワード機能・通信機能・電池交換サイン・ バーコード読み取り機能・簡易表計算機能・世界時計機能 (主要150都市の日付・時刻表示・サマータイム表示・ユーザー都市の登録)
電源動作電池 リチウム電池(CR2032)2個
メモリ保護電池 リチウム電池(CR1616)1個
消費電力0.2W
大きさ幅150x奥行90x厚さ19(mm)
重量約270g(電池含む)
オプション ACアダプタ
充電式バッテリ・アダプタ
通信ケーブル(ET1同士を接続するケーブル)
パソコンハンド(PC-98との接続キット)
ET-BASIC NEC/HUDSON SOFT \15,000
ET-ASSEMBLER
ET-RUCTURE
専用ケース
専用ICカード
品名型番メーカー価格
32KB RAMカードPI-ET1-RC1NEC\10,000
64KB RAMカードPI-ET1-RC2NEC\15,000
128KB RAMカードPI-ET1-RC3NEC\20,000
英和辞書カードPI-ET1-SC1NEC\8,800
和英辞書カードPI-ET1-SC2NEC\8,800
7ヶ国語会話カードPI-ET1-SC3NEC\8,800
国語辞典カードPI-ET1-SC4NEC\16,000
倉庫番RHET001リバーヒル・ソフト\7,000
大戦略ETSAET001システム・ソフト\7,000
自己中心派GAET001ゲームアーツ\7,000
BLODIAHCET001ハドソン\7,000
関連書籍
ETテクニカルハンドブックインタープログ編/BNN出版 (FD付属)
ポケコンジャーナル'90/12NEC電子手帳ET試用記(厨子直人氏)
ポケコンジャーナル'91/05フルスクリーンモニタET-1(芸夢職人氏)
祭日付きカレンダー(井原直次氏)
ポケコンジャーナル'91/06スネーク・ワールド(芸夢職人氏)
ポケコンジャーナル'91/07ディレクトリ・エディタ(井原直次氏)
ポケコンジャーナル'91/08Zsy-MONITOR Version2.40(Zsy氏)
FRUITS FIELDS(小林龍也氏)
ポケコンジャーナル'91/09ICカード・カタログ
プログラムランチャー Zsy-Choice Ver.1.00(Zsy氏)
ミサイル・ファントムET(芸夢職人氏)
ポケコンジャーナル'91/10Zsy-FILER Version1.50(Zsy氏)
ポケコンジャーナル'91/11New&News 128KB RAMカード
自動実行プログラムランチャー Zsy-EXE Ver.1.00(Zsy氏)
ポケコンジャーナル'91/12常駐プログラムマネージャー Zsy-TIME(Zsy氏)
    Zsy-BOX Ver.0.10(スクリーンセーバー)
    Zsy-DT Ver.0.30(カレンダー・クロック表示)
    Zsy-GR Ver.0.20(スクリーンセーバー)
    Zsy-ONG Ver.0.30
    Zsy-SLOT Ver.0.20(スロットマシン)
    Zsy-TR Ver.0.30(レジスタモニタ)
ポケコンジャーナル'92/01ETプログラミング講座 第1回(厨子直人氏)Zsy-TIMEのテクニック解説
ポケコンジャーナル'92/02ETプログラミング講座 第2回(厨子直人氏)文字表示
Zsy-TIMEアプリケーション・プログラム・ソースリスト
ポケコンジャーナル'92/03ETプログラミング講座 第3回(厨子直人氏)コントロールコード・カーソル・バーコード
Zsy-TIMEアプリケーション・プログラム・ソースリスト
ポケコンジャーナル'92/04ETプログラミング講座 第4回(厨子直人氏)文字出力とカーソルセ一制御のまとめ
バーコードリーダー Zsy-READER(Zsy氏)
ポケコンジャーナル'92/05ETプログラミング講座 第5回(厨子直人氏)入力
Zsy-FIGHT(Zsy氏)
ポケコンジャーナル'92/06ET-BASICの紹介(Zsy氏)
ETプログラミング講座 第6回(厨子直人氏)入力
ポケコンジャーナル'92/07ETプログラミング講座 第7回(厨子直人氏)入力のまとめ
ポケコンジャーナル'92/08ETプログラミング講座 第8回(厨子直人氏)グラフィック
ポケコンジャーナル'92/09Zsy-TAMUSHI(Zsy氏)
ポケコンジャーナル'92/11オーバーレイの実現とその活用法(Zsy氏)

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